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2009年12月30日

新年はラジオから

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皆様

早いもので今年も残すところあと少しとなりました。
今年もいろいろありましたね。
この往復書簡でも今年を振り返ろうと思っていたのですが
それより先に来年の話題が飛び込んできました。

今年は 1 月の始めに新聞で私の研究やILCの話が紹介されました。
(あれれ、この話はこの物理屋往復書簡では
お話していなかったようです。)
来年は新年早々ラジオに登場することになりそうです。
一昨年の夏に,国際ガンダム学会準備会議に出席したことは
お話したと思います。
http://linear-collider.org/dialogue/2008/08/post_70.html
その話を聞きつけた広島のラジオ局から
ロボットアニメについて話を聞きたいと行ってきました。

1 月 16 日に
「中四国ライブネット 広島発!
人生で大切なことはすべてアニメから教わった~昭和アニメ人生訓~」
という番組で放送したいのだそうです。

ロボットは全くの専門外ですので、ディレクターの方に
「ロボットは専門ではないですよ。
どちらかというと、今年の 8 月に中高生向けにお話しした
"物理学からみた空想科学の世界"の方が
番組の趣旨にあったお話ができかもしれません。」
というようなことお話ししました。

そうしたら
「宇宙戦艦ヤマトで描かれたSFはどこまで現実可能か?」
をテーマにしたいということになりました。
確かに私は宇宙戦艦ヤマトの世代です。
たぶんほとんど見ていると思います。
う~~ん、どんな話になるかな。

正月の宿題ができました。
素粒子や宇宙やILCの話を挟むことができるのかどうか
やってみなければ分かりませんが。
どんなことになるか楽しみです。

取材(録音)は 1 月 8 日、
ボツにならなければ 1 月 16 日の午後 6 時から放送されます。
その顛末は新年のお楽しみです。

高橋 徹より

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2009年12月17日

ミュンヘン便り

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皆様

 11月20日に高松で高校生向けにセミナー
(お昼は讃岐うどんの有名店に連れて行ってもらいました)
11月22日から26日までミュンヘン、
11月28日は大学で女子中高生対象のセミナーと
慌ただしい日が続きました。
話題がたまっていますが、まずミュンヘンの話からしましょう。

今回は、最近検討している研究計画の打合せと情報収集でした。
とても強度の高いレーザーと電子をぶつけてみようという
ちょっと乱暴(?)な話です。
高エネルギー加速器実験とは少し違う観点から素粒子実験が
できるかもしれないということを検討しています。

ところで、ILCもそうですが
一般に素粒子実験の計画は
過去の実験や理論を土台にして、
可能性や実現性をできる限り詳細に検討しています。
高強度レーザーの話も、もちろんいろいろ検討しているのですが
素粒子実験の感覚からいうと、
おおざっぱというか「面白そうだからやってみよう」
という考えが強めにでています。

日本でこのような計画は
あまり一般的ではないと思いますが
最近ヨーロッパで Extreme Light Infrastracture (ELI) という
高強度レーザーの大プロジェクトが動きはじめました。

このプロジェクトは、基礎物理から応用まで含んだ大きな計画で
多くの人による詳細な検討がなされていますが
それでもこの計画が実現する背景には
「何が起こるか分からないけれどもやってみよう」
ということに関する寛容さがあるような気がします。
岩田さん、山本さんはいかがお思いですか。

ミュンヘンのビアホールの報告は次回にしましょう。

高橋 徹より

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2009年12月05日

基礎科学は「コンクリート」ではなく「人」

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皆様

「事業仕分け」が一通り終了しました。
 この「国民の目線」から行われたという作業は
基礎科学に大きなダメージを与える結果となっています。

例えば、世界的な放射光施設である Spring8 は
半分ほどに削減され、
スーパーコンピュータは事実上廃止となったと聞きます。
放射光施設は物性物理学を中心にハイテク産業を
維持発展させて行くために欠かせないものです。
そして、スーパーコンピュータは、韓国や中国の追撃に
敗退してしまわないために
大きな役割を果たすはずでした。

日本の高エネルギー物理学に対しても
大きな削減を要求しています。

一方、国民の大半は「事業仕分け」を
大筋で支持しているようで、
また、政府の支出が収入の約 2 倍になるという
危機的な財政状況から
いったん「事業仕分け」で廃止/縮減となった事業が
復活するのは、よほどのことがないかぎり難しいと言われています。

「よほどのこと」とはなんなのか。
仙谷行政刷新担当相は、会議後の記者会見で、
「国民の納得が得られる説明」がなされれば、
復活の可能性もあると言っています。

なぜ基礎科学は大幅な削減の対象になったのか。
民主党は「コンクリートから人へ」というスローガンをかかげて
政治の根本的な改革を目指していますが、
どうも、基礎科学は「コンクリート」に入れられたようです。

将来の「ものづくり日本」を支えて行くのは
独創的なアイデアをだす「人」、
精密な作業をこなす「人」、
そして組織をまとめ、動かす「人」
であることは間違いありません。

でも、基礎科学は「コンクリート」ではありません。
たとえば高エネルギー研究所の加速器施設を見るとき、 
直接見えるのは建物の壁かもしれませんが、
中には、世界トップレベルの科学者や技術者による
最先端の電磁場発生装置があり、
超高真空機器があり、
それらが、「我々はどこから来たのか」という
疑問に答えるために稼働しています。

そして、それらの科学技術は日進月歩。
それらの科学者や技術者が少しでも研究開発を怠れば
みるみる世界から取り残されて行きます。
本当に見えているのは
世界をリードする「人」です。

また、それらの施設が生み出す科学的成果は
日本の若者を刺激し、
「理科離れ」に対する大きな処方せんとなっています。

高エネルギー研究所の実験によって実証された小林・益川理論や
LHC、リニアコライダーでの研究対象となる南部の理論は
2008 年ノーベル賞につながりました。
それは日本の若者に大きな希望を与え、
私の大学でも物理学志願者が倍増しました。
基礎科学は将来の「ものづくり日本」を支える「人」をつくっています。

さらに、基礎科学は国際的です。
たとえば高エネルギー研究所は
年間約 6,000 人の研究者を受け入れていますが、
そのうち約 1,000 人は海外からです。
そのほか直接日本に来なくても、
共同研究として日本での実験に参加している研究者は
その何倍かいます。

それらの人々が「我々はどこから来たのか」という
ひとつの目的に向かって邁進しています。
会議はもちろん英語で、
家族ぐるみでの国際的おつきあいも少なくありません。
基礎科学は国際的な「人」をつくります。

ともすれば、
基礎科学は一般国民にその価値を理解してもらいにくい
巨大な財政赤字のときに
「子育て支援」や「高速道路無料化」と
「宇宙がヒッグスでみたされているかがわかる」を比べれば、
すぐ理解できる「子育て支援」や「高速道路無料化」をとるでしょう。
でも上に述べたように、
基礎科学は日本の未来を支える「人づくり」なのです。

山本 均 より

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