物理学者と素粒子好きのみなさんとの、ILC(リニアコライダー)にまつわる対話集。
好奇心のおもむくまま話はいろいろなことろに、飛んでいきます! はてさて、素粒子物理研究の一端をここで垣間見る見ることはできるのでしょうか?
▼はじめのごあいさつ
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広島大学准教授。スタンフォード線形加速器センターへて、広島大学へ。リニアコライダーでは「レーザーと電子ビーム」をキーワードに光子光子衝突や偏極陽電子源の開発を行っている。小学校のときは剣道場へ通い、中学・高校ではサッカー部だった。今でも週2回のスポーツジム通いは欠かさない。
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バレエ評論家。第4回・5回日本ダンス評論賞入賞。好きなものはバレエと猫。著書に『「星座」になった人 芥川龍之介次男・多加志の青春』(新潮社)がある。
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高エネルギー物理学実験を楽しんできたが、1年半前に KEKを定年退職して現在は名誉教授に。05年には木原元央氏と共著にて『リニアコライダー 素粒子の謎に挑む最強の加速器』(技術経済研究所)を刊行。
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カリフォルニア工科大学大学院に留学し、スタンフォード線形加速器センター、フェルミ研究所等で素粒子実験に携わる。ハーバード大学准教授、ハワイ大学教授を経て現在東北大学教授。ILCの物理と実験に関する国際組織のアジア代表を務めている。趣味は茶道、ピアノ、インラインスケートなど。
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2009年08月27日
山本 先生
楽しそうなクラス会ですね。
高校の同級生というのは、気がおけませんし
また職種がちがう方々とのセミナーは
新たな刺激があることと思います。
実は、先月私も高野山へ行ってきました。
日食祈願にかこつけて、それもひとりで。(笑)
人にはあまり言いませんが、仏像とか仏教美術、
神社仏閣などが好きなんです。
京都、奈良・・・奈良へはよく通いました。
どこかの社寺の特別展と名がつくと、もう行きたくなって困ります。
極楽寺駅で山の斜面を這うようなケーブルカーに
乗った瞬間から、気分が高揚してきました。
高野山は、明治初期まで千年以上も女人禁制だったのです。
霊宝館の「高野山の名宝」は圧巻でした。
八大童子立像や如意輪観音像を含む
国宝13点、重要文化財 31 点が一挙公開。
仏像は私にとって、他の美術品とは異なります。
祈り、憧憬の対象と言いますか、観せていただくこと
拝むことによってエネルギーの交換をするんです。
運慶作の制多迦(せいたか)童子立像・恵光(えこう)童子立像などを
ガラス越しですが、すぐ間近で見ることができました。
仏像と視線を合わせては、うれしくて仕方がないのでした。
もっと感動したのは、一の橋口から奥の院へ向かう
約二キロの参道です。
弘法大師の御廟に続く石畳の参道の両側に
二十万基ともいわれるお墓がありました。
墓石を磨きあげたりせず、生した苔もそのまま。
経る年月にまかせ、
石のお墓が、鬱蒼とした深山に溶け込んでいっています。
織田信長や明智光秀、豊臣秀吉などのお墓…
日本の歴史を彩る有名な人々です。
分骨墓とはいえ、敵も味方も、殺したほうも殺されたほうも
この二キロに満たない空間に一緒に眠っているんですね。
いきつくところは、一緒かな。(苦笑)
高野山の懐の深さゆえか、石の冷たさはなく、
妙にあたたかく感じました。
日本に生まれてよかった、そう思います。
今度は、秋に訪れてみたいです。
そしたら、次は念願の熊野古道かな?
天満ふさこより
2009年08月20日
皆様
お盆休みに高校のクラスメイト 9 人で
高野山一泊二日の合宿がありました。
世話人は奈良女子大の文学部教授、
その息子さんも参加して全員で 10 名。
高野山で観光をして宿坊に泊まり
その夜はお互いにセミナーをし、
つぎの午前中また観光して帰るというプラン。
セミナーは障子の上に張った模造紙に
液晶プロジェクターで投影して行ったのですが、
画面の色が抜け落ちたり、全く反応がなかったり。
ケーブル内の接触不良とまでは判明したものの
この山の中、半分諦めていたら
なんと雲水さんが良いケーブルを貸してくれました。
最近はお寺も随分ハイテクになったものです。
奈良女教授による高野山の話のあと、
メインは僕の素粒子の話になりました。
アリストテレスの自然哲学から素粒子の標準理論まで
物理の発展は理論の統合の歴史だった
という話をしたのですが、
たくさん質問が出たのは
リニアコライダーの話になってから。
メンバーには NTT の研究所の所長さんや
大手保険会社の代表取締役常務に
ソニーのエンジニア、
そしてもう一人は最近日本に帰ってくるまで
シャープ・アメリカの社長さん。
みなさんなかなか鋭い。
「なぜ LHC は円形なのに ILC は線形なのか?」
「中性子は電荷がゼロなのにどうして反粒子があるのか?」
など、的を射た質問がバンバン飛び出します。
暗黒物質がそこにあるとわかっている一方
我々の知っている物質でありえないと聞いて、
NTT さんは「面白いなあ」と何度も唸り、
「それで六千億円は安いんとちゃうの」
とのコメント。
これには狂喜しました。
山本 均より
2009年08月16日
天満様
『天使と悪魔』は、結局見に行けませんでした。
本は読んだので、ストーリーはだいたい知っていますが。
それでは、ご質問に回答してみます。
> 1. 反物質って持ち出せるんですか。(持ち出せないですよね)
> 2. 反物質の保存の仕方を教えてください。
> 映画ではバッテリーがでてきましたが、電池で浮かせているのですか。
> そうしたら、停電になって緊急用の電源も作動しなかった場合
> 爆発しそうで怖いのですが。
1 と 2 は、一緒に考えてみましょう。
小林・益川理論を証明したKEKのBファクトリーですが
これは電子の反物質である陽電子を蓄積していると言って
よいでしょう。
その量は世界一でしょうね。
ただし周長が 3 kmの円形加速器の中、それも地下にあるのですから
とても持ち出すことはできません。
もちろん、もっと小さな装置で蓄えることもできます。
装置そのものは、ある程度小型にできますが
反物質を空中に浮かせて蓄えるには、
電界や磁界をつくる装置が必要です。
中を真空にするためのポンプも必要です。
物語の中では磁界を交差させて
反物質を浮かせているという感じだったようですが
実際には、磁界と電界を組み合わせたものがよく使われています。
でもバッテリーだけで動いて、持ち運べるものは見たことありません。
> そうしたら、停電になって緊急用の電源も作動しなかった場合
> 爆発しそうで怖いのですが。
大丈夫です。そんな量の反物質は作れませんから。
> 3. 反物質を人工的に作り出す意味を、あらためてお教えいただけませんか?
私たちの立場から言えば素粒子実験です。
小林・益川理論を証明した KEK の B ファクトリーに
陽電子は必須でしたし、ILC も電子・陽電子衝突型です。
最近は陽電子を使って、物質の内部の様子を調べる研究も行われています。
研究以外でも最も有名なのは、やはり PET (陽電子断層撮影)による
ガンの早期発見でしょうか。
広島にも数年前に PET 施設ができました。
高橋 徹より
2009年08月10日
皆様
財務大臣の与謝野馨さんが、パソコンについて語っている様子が
web 上で配信されています。
与謝野さんといえば、ILC にとても理解のある方ですが
与謝野鉄幹・晶子の孫ということから
文系の方という先入観がありました。
ところが web を見ると、パソコンやコンピュータ技術に
とても造詣が深いことがわかります。(というよりもオタクに近いかも)
今回は、オープンソースについての話もされています。
オープンソースというのは、コンピュータのソフトウェアの
プログラムを公開してみんなで開発していこうというものです。
Linux や Firefox が有名ですね。
私も Firefox を愛用していますが、世界中の人が拡張機能を開発していて
自分の好みに合わせてカスタマイズできます。
私のパソコンの OS は Windows ですが、
その中で使っているソフトには、オープンソースのものがかなりあります。
最近、高エネルギー物理学の研究では、
Linux を使うことが多くなっています。
(高エネルギー業界で根強い人気のある MAC OS も
BSD という Unix 系の OS です。)
私はここ何年か、パソコンは文房具として使うことの方が多くて
日常は Windows を使っています。
先日久しぶりにシミュレーションをする必要があって
Linux を使いました。
(何のシミュレーションかって?
先日報告した「物理学から見た空想科学」のネタ作りのために
空気中で陽電子を飛ばしたらどうなるかやってみたのでした。
何の事か分かりにくいでしょうか?
陽電子の後に「砲」ってつけてみて下さい。)
Linux もずいぶん使いやすくなって、
文房具ソフト(これもオープンソースですね)もずいぶん充実してきました。
この先どうなっていくのでしょうか。
OS はまだまだ Windows が大きなシェアを占めていますが
google が近々オープンソースの OS を出すようですし
どう変わっていくのか楽しみでもあります。
ところで、オープンソースの話の中で与謝野さんは “TRON” にも
触れられていました。
TRON と言えば、携帯電話や自販機など
私たちの身の回りの機会に広く普及している OS ですが
日米貿易摩擦の荒波に揺さぶられた歴史でも有名です。
もし貿易摩擦などなく、TRON プロジェクトが順調に進んでいたら
オープンソースはもっともっと普及していたかもしれない。
歴史に「もし、たら」をいっても仕方ないですが
与謝野さんの話を聞いて、久しぶりにそんなことを思い出しました。
高橋 徹より
2009年08月08日
皆様
広島大学には、「科学わくわくプロジェクトセンター」
というのがあって、中学から高校生を対象に
科学に触れる機会を提供しています。
昨年も科学塾という企画で
高校生の皆さんに 3 日間の授業や実習をしました。
今年は「サイエンスレクチャー広島」という
中学生向けの講演をしました。
講演の内容は「物理学からみた空想科学」です。
高校や一般向けの講演や授業は
年に1,2度やっていますが、中学生向けは初めてでした。
それに日頃「物理学からみた空想科学」を
研究している訳ではありません。
どんな内容にするか、どんなテーマを取り上げるか
準備にはかなり時間がかかりました。
もちろん単なるお話ではなく、素粒子や宇宙物理学への興味を
もってもらうように工夫したつもりです。
さて内容です。
前半は、物理学からみた問題はなく
技術の進歩でできそうなこと、宇宙ステーションなどの話。
それに空想科学といえば、やはり「ビーム」は欠かせません。
ビームを作る道具=加速器という筋で
しっかり ILC も宣伝しました。
話だけでは疲れてしまうので
その後霧箱を使った放射線の飛跡の観測でちょっと息抜き。
この実験はいつも好評です。
最後は「ちょっと難しい話を」という主催者からのリクエストに答えて
「反物質を作るのがいかに大変か」ということから
「なぜそもそも宇宙に反物質は無いのか」という展開や
「超光速航行は可能か?」という問いかけから
「時間や多次元空間の話」というように
素粒子や宇宙の基本原理と空想科学の関係を話しました。
最後は「科学を身につけると SF はもっとおもしろい。」
で締めくくりましたが、
中学生の皆さんの反応はどうだったでしょうか?
そのうちアンケートの集計もできるので、
そうしたらまた報告します。
終わったあと ILC について質問に来た方もいました。
宣伝効果もあったようです。
ところで,、話のなかで
「ドラえもんのタケコプターはヘリコプターの原理では飛べない。
つまり、タケコプターは現代物理学を超越したもの。」
という説明をしたのです。
でも新聞紙上では「ドラえもんのタケコプターでは飛べない。」でした。
私の真意は「ドラえもんのタケコプターは現代物理学を超越したもの。」
なので、飛んで欲しいんです。
「飛べない」では夢がないですよね。
高橋 徹より
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