rssフィード


Movable Type 3.2-ja-2



2007年02月19日

Re:『天使と悪魔』と反物質

line

天満様

先日、「 生成できる反陽子の量は、
反物質爆弾などとはまったく縁のない量 」と
書きましたので、ちょっぴり補足しておきましょう。

反陽子は高エネルギー加速器でつくります。
そこでかなりエネルギーと方向の揃った反陽子を束( ビーム )とし、
今度は、加速器と逆の機能を持つ「 減速器 」という装置に送り、
エネルギーを千分の1くらいに落とします。

CERN では、100 秒ごとにおよそ 3 千万個という低エネルギー反陽子が
ビームとして得られているそうです。

実験グループは、これをさらに減速する装置を使って
超低速化した上で、磁場と電場をうまく組み合わせて使い、
多数の反陽子を貯蔵します( 超高真空中に浮かせます )。
減速器からビームが来るごとに、100 万個くらいの反陽子を
一旦貯蔵できるとのことです。
この減速、貯蔵を可能にしているのは、超精密にできた装置です。

ところで、1 グラムにするには
10 の 23 乗個の反陽子を貯めなければなりません。
100 万個はたったの 10 の 6 乗です。

親の加速器のエネルギーを上げて、もっと多くの反陽子をつくり、
ビーム化の効率を高め、すべての減速プロセスと捕獲とで
損失をなくしたとしても、全体で1万倍の向上が可能かどうか疑問です。
できたとしても、全システムをぶっ続けに運転して
1千万年くらいかかるという計算になります!

非常に荒っぽいとは言え、こういう計算は
チェックポイントがないので苦手です。
でも、少しくらい桁を間違ったとしても、結論は同じです。
大きく進歩している反陽子科学であっても、
反物質爆弾などとは、まったく縁がありません。

幸い、あの小説の本当のポイントは爆弾にはなくて、
謎解きと予期しない展開でした。

本音の感想を言いますと、
「おれたち読者にあんな謎を解けるわけがないよ」。

岩田正義より

line

このエントリーのトラックバックURL:
http://linear-collider.org/mt/mt-tb.cgi/49