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2007年01月22日

放射光とコンプトン散乱の違いについて(その1)

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天満様

ところで、先日、血管造影に最適な、30 keV 程度の X 線をつくるには、
放射光施設では高エネルギーの電子が要るので、
スプリング 8 や KEK ー PF のような巨大な施設になってしまうのだけれど、
コンプトン散乱を使ったビリヤード方式ならば
はるかに小さいエネルギーの電子でも OK だという話をしました。
今日は、なぜこんな違いがでるのかの説明を試みて見ます。

先日も言いましたが、光は波としての性質と光の粒 = 光子としての、
両方の性質を併せ持っています。
放射光とコンプトン散乱の違いは
まさにこのどちらの側面を利用しているかの違いです。

●まず放射光から:
やはり電子の代わりに、ボールを考えましょう。
真空中の波動が光ですが、これでは想像しにくいので、
真空 ~ 水、光 ~ 水の波、と考えてみます。
(真空中には水の代わりになるものは何もないから、
そんなたとえは、だめって? いやいや、これこそが
20 世紀の量子力学の成果です。)

ボールが水の中を動くと、それにつれて周りの水も動きます。
動くというのを良くみると、いろいろな振動数(波長)の波が
入り交じっていると考えることができます。
放射光というのはこれを連続的に起こすために、
水面上でボールをぐるぐると回し続けるようなものです。

ところで光のエネルギーを波の言葉でいうと、
エネルギー = 振動数 × プランク常数(これは単に常数と思いましょう)
です。

つまり高いエネルギーの光を出すということは
高い振動数の波をつくることになります。
ボールを水面上で動かして、水面に波を起こす方法では、
高い振動数の波ができにくいのは、想像できますか?

ちょっとまじめに計算すると
(ここからボールと水でなくて放射光の話になります)
放射光のだいたいのエネルギーは、電子のエネルギーの 3 乗に比例して
回転(すなわち加速器の)半径に反比例します。
これに、電子を曲げるには電磁石が要るとか、
放射光を出したことによって、親の電子自体が失ったエネルギー
(これは放射光のエネルギーの 4 乗に比例するのです。)
を補ってやらないと、加速器中を回し続けることができないとか、
実際の技術的なことが絡むと、結果としてスプリング 8 とは
KEK - PF のようなことになってしまいます。

コンプトン散乱の場合は、
ビリヤード方式の電子という粒と光子という粒の衝突ですから、
エネルギーの高い電子をつくっておいて、
それをエネルギーの低い光子(レーザー)にぶつけて、
光子は跳ね返すという、描像です。

電子 ~ バット、光子 ~ 野球のボールと置き換えると、
松井選手がホームランを打つような感じです。
高いエネルギーの光子を作り易いのが想像できてもらえたら、
うれしいです。
電子のエネルギーは松井選手のバットスイングのスピードに相当しますが、
30 keV の X 線をつくるのに、ウルトラマン(スプリング 8 ? )に
打ってもらう必要はありません。

高橋徹より

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