rssフィード


Movable Type 3.2-ja-2



2006年11月21日

Re: 初心者が ILCを理解するのに役立ちそうな本をご紹介ください。

line


天満様

実験屋と理論屋が犬猿の仲であるというのは、
誤解というか最近はそうでもありません。
確かに、双方で
なかなか話が通じない時期はあったと思います。
でも最近、素粒子をやっている実験屋は、
理論屋と協力的にやっています。
理由は簡単で、実験も理論は研究が進んできて
逆に実験だ理論だといっていられなくなってきのです。

確かに超ひも理論がそのまま現れるエネルギーを
直接加速器で観測するのは、無理だと思います。
しかし ILCでも、それにつながる道筋を
見つけることができる可能性があると思っています。
ILCのエネルギーは、
現在の最高エネルギーの加速器の数倍でしかありません。
それを数千億円もかけて作ろうとしているのです。
もし、今の数倍のエネルギーのことだけしか
わかる可能性がないとしたら、
納税者に説明はできないでしょうね。
でも、ILCでエネルギーを数倍にすると、
超対称性から大統一理論というシナリオに対して、
とても重要な情報が得られると考えられています。
そのシナリオが間違っていた場合は、
はっきりそれがわかると思います。

理論と実験の話にもどりますが、
この二つを比較的はっきり区別するのは、
年配の研究者に多いとような気がします。
彼らの時代がそうだったからです。
私は物理を研究するのに
計算という方法を使うのが理論屋、
(計算もしますが)測定器をつくって
実験をするという方法を使うのが実験屋と考えています。
つまり手法が異なるだけです。

両方できればいいのですが
計算も実験も技術や労力が非常に大きいので
両方はできないのです。
ただ最近は、計算機の発展で、
一昔前はとても大変だった計算が
我々にできるようになりましたし、
シミュレーションのソフトととても進んで、
実験の専門家でなくても、
実験のシミュレーションをしようと思えば
ある程度はできるようになりました。
そのようなこともあり、
理論と実験の垣根はかなり低くなってきたと思います。
このような進展はここ10、20年で顕著になってきたので、
まだまだ両方を区別する人が多いのは事実でしょうね。

──余談ですが、
某研究所がつくった大学生向けのビデオがあるのですが、
その中で研究者の紹介をするテロップが
xxxx大学教授(理論)、yyy大学教授(実験)というような
書き方をしていました。
私はそのビデオを学生にみせた後、
(理論)とか(実験)というようなことを
肩書きにつけるようなセンスは
全く前時代的悪癖であると言っています。

長くなりましたがもう一点 ILCのことを書いた適当な、
入門書ですが、「ない!」ということに気がつきました。
素粒子物理を専攻する大学院生向けのものはあるのですが。

最近、KEKの退職された方がその記念(?)に書きました。
もう一つ英語のものは10人ほどの共著でそれぞれの得意な分野を
1章ずつ担当したものが、つい最近でました。
私も1章担当しました。
でも、ILCのことをきちんとかいた
ブルーバックスのような本はありません。

これは問題ですね。
すぐにでも関係者で議論することだと思いました。
これを(いまさらながらですが)思いついただけでも、
このやりとりをしているかいがありました。
もう少し、探してみようと思いますが。

高橋徹より

line

このエントリーのトラックバックURL:
http://linear-collider.org/mt/mt-tb.cgi/24