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vol.9 自然界の基本的な4つの「力」その1
前回は素粒子の間に働く
素粒子は必ず互いを結びつける糊と一緒に考えられる
素粒子は、粒子を投げたり受け取ったりすることで力を伝えているというのは前回お話した通りです。 この世界に存在する物は、如何なるものであろうとも素粒子同士のそのような反応によって形作られています。 しかし、力を伝えるために投げ合う粒子は何でも良いわけではありません。実は素粒子間に引力や斥力を引き起こす 原因となる粒子は、ボソンであることが分かっています。逆に僕等の身体や身の回りの物、そして地球や太陽などの星、 あらゆるものは必ずフェルミオンで形作られています。これはボソンとフェルミオンの性質の違いに起因しているのですが、 細かいことは後々にまた説明しますから一旦忘れましょう。大雑把に簡単に言ってしまうと、ボソンというのは積み木のように 積み上げていくことが出来ない性質を持っています。そのため物質を形作ることは出来ず、力を伝える役割を持っています。 力を伝えるボソンのことを、素粒子物理学の世界ではゲージボソンと呼びます(ゲージボソンもそれ以上分解不可能なので、 素粒子の仲間です)。逆にフェルミオンは積み木のように積み上げることが出来るため、物質を形作ることが出来るのです。

糊の正体、それは粒子の間に働く引力
ゲージボソンは力を伝える素粒子。ということは、もし性質の異なるゲージボソンが複数個存在したら、 それによって伝わる力の性質が異なるんじゃないだろうか?もし貴方がそう考えたとしたら、 貴方は非常に直感が優れているかもしれません。実は我々が生きているこの世界には「基本的な4つの力」 というものが存在します。「基本的な」という仰々しい言葉がついているからには、 何かしら深そうな話が出てきそうですよね。それを理解するためにもここでは一旦、 力が粒子のキャッチボールだということは忘れて、もっと日常的な身の回りの力を思い浮かべてみましょう。 例えば、僕等の目の前にテーブルの上に乗った箱があったとします。この箱を横に 10センチメートル程度ずらそうと思ったら、貴方ならどうしますか?ここで磁石の力を使おうと思ったり、 息を吹きかけて動かそうと思うような人は稀だと思います。普通は「手で箱に力を加えて」動かしますよね。 それでは、この「手で箱に力を加える」という行為の原因を考えてみましょう。貴方の「手」を動かしているものは 一体なんなのでしょうか?それは、貴方自身の「脳」が電気信号によって貴方の「手」の神経組織に、 「箱が右にずれるように手で力を加えなさい」という命令を出しているからこそ起こっているものなのです。 神経組織に伝わった電気信号が、その電気の力で人間の筋肉を緊張させたり弛緩させたりすることで、 僕等の「手」は動いているわけです。すなわち、「手で箱に力を加える」という行為は「電気の力で箱に力を加える」 ということに帰着出来るわけです。この説明は非常に大雑把な説明なので、多少厳密性を欠いているでしょうが、 本質的には正しいことを言っています。このように、貴方の身の回りに日常的に存在している「力」というものは、 基を辿って行くと、必ず以下の4つの力のどれかに帰着出来てしまうことが分かっています。そういう意味で、 以下の4つは「基本的な力」と呼ばれています(少なくとも、現在見つかっている現象に関しては必ず以下の4つに帰着します)。
・電磁気力(電気と磁気の力を合わせてこのように呼ぶ)
・重力
・強い力
・弱い力
これらを、素粒子物理学の研究者は「自然界の基本的な4つの力」と呼んでいます。素粒子というのは、 これら4つの力を互いに及ぼしあいながら、極めて長い時間を掛けて宇宙を現在の姿まで発展させてきたのです。 そういう意味でこれらの力の性質と、その力を及ぼしあう素粒子の性質を調べることは、この宇宙の設計図を知る 行為に他ならないわけです。どうです?こう聞くと凄く面白そうに聞こえませんか?実際に研究すればするほどに 面白い世界なので、興味が湧いた方は是非この研究を応援して頂きたいと心から思います。また、その中でもこれから 次世代を担うことになるまだ若い方々には、積極的にこの業界に入ってきて頂きたいと思います。さて、少し話が逸れましたが、 上記の4つの力のうち、下の2つの力を聞いたことが無いという人も多いことでしょう。これに関しては次回説明しますので、 お楽しみに。それでは今回はこれまで。

(文・伊藤英男 東京大学宇宙線研究所)



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